かつて協会は「公的なもの」「公的なものに近い存在」と考えられていました。
昨今はそうした認識が薄まっているように思われます。
かつて「起業」といえば、
- 会社を作る
- 個人事業主として独立する
の2択と考えられていました。
昨今はここに「協会を作る」という新しい選択が加わっています。
こうした環境変化により、「協会を立てて起業する」ケースが増えているようです。
そこで今回は「協会」のビジネスモデルについて解説します。
<目次>
- 協会は名乗るだけで作れる
- 協会は営利活動ができる
- 「非営利団体」でもお金儲けができる?
- 「非営利団体」はどこが「非営利」なのか?
- このギャップが、「協会」に有利にはたらく
- 協会のおもな事業モデル
- 業界団体型
- マニア型
- 資格認定型
- まとめ
1.協会は名乗るだけで作れる
「脱サラする」「独立する」「起業する」「自分でビジネスを始める」
というと、ふつうは
- 個人事業主になる
- 小さく会社を作る(ひとり社長になる)
みたいなことをイメージしますね。
また、小さく会社を作る(ひとり社長になる)場合は、
- 株式会社
- 合同会社
どちらかを選択するのが一般的です。
どちらを選択するにせよ、法人登記をしなければなりません。
登記せずに「株式会社」「合同会社」を名乗ることはできないからです。
いっぽう、協会を立てて起業する場合ですが、「協会」という法人格はありません。
したがって法人登記をしなくても「協会」を名乗ることができます。
法人登記をしていない団体を「任意団体」といいますが、筆者の推定では、日本国内で「協会」を名乗っている団体のうち、約4割が法人登記をしていない「任意団体」です(※)。
(※)あとの6割は法人登記をしています。
協会が法人登記をする場合、「一般社団法人」または「特定非営利活動法人(NPO)」を選択することが多いようです。
2.協会は営利活動ができる
協会には「非営利団体」のイメージがあります。
でも実際のところはどうなのでしょうか。
2-1.「非営利団体」でもお金儲けができる?
「株式会社」や「合同会社」は、「営利団体」です。
営利団体ですから、お金儲けをしても構いません。
むしろ、せっせとお金儲けに励むのが「株式会社」や「合同会社」の役割だと言ってもさしつかえないでしょう。
では「非営利団体」はどうでしょうか。
一般的な感覚として
- 「非営利団体」はお金儲けをしていない
- 「非営利団体」は赤字で活動している
- 「非営利団体」はボランティアで成り立っている
と多くの人が理解しているようです。
しかしそれは間違い。
実際には、「非営利団体」であっても、お金儲けをしても良いことになっています。
2-2.「非営利団体」はどこが「非営利」なのか?
じつは、「営利」「非営利」の違いは「お金儲けをするかしないか」ではありません。
「儲かったお金を、分配するかしないか」が、「営利」「非営利」の分け目となります。
株式会社には「株主」がいます。
株式会社が儲けたお金のうち何割かは国のもの(税金)です。
税金を支払った残りの利益のことを「税引後利益」といいますが、「税引後利益」は株主に分配されます。
合同会社には「株主」はいませんが、出資者を意味する「社員」がいます。
(ここでいう「社員」とは、従業員という意味ではありません。合同会社の実質のオーナーを「社員」といいます)
合同会社が儲けたお金のうち何割かは国のもの(税金)です。
税金を支払った残りの利益、すなわち「税引後利益」は、「社員」に分配されます。
このように、株式会社や合同会社では「税引後利益」が株主や社員に分配されます。
こうした利益分配のしくみを持つ団体のことを、「営利団体」と呼ぶのです。
「一般社団法人」や「特定非営利活動法人(NPO)」には、利益分配のしくみがありません。
利益分配のしくみがないという理由で、「非営利団体」として扱われます。
つまり、「お金を儲けているかどうか」と、「営利か非営利か」は、関係がないのです。
2-3.このギャップが、「協会」に有利にはたらく
前述したように、
- 「非営利団体」はお金儲けをしていない
- 「非営利団体」は赤字で活動している
- 「非営利団体」はボランティアで成り立っている
と多くの人が勝手に誤解しています。
しかし実際には、「利益分配のしくみがあるかないか」で「営利」「非営利」が区別されます。
このギャップが、「協会」には有利に働きます。
「協会は非営利だから、きっとお金がなくて苦労しているんだろうな。それでも世のため人のために頑張っているんだろうな」
そんなイメージがつくからです。
日本は「儲ける」「稼ぐ」という言葉を否定的にとらえる人が多い国なので、なおさら、非営利団体は歓迎されます。
したがって、事業の内容によっては
「会社という枠組みで事業を行うよりも協会という枠組みで事業をするほうがうまくいく」
という場合があります。
たとえば
- 教育
- 啓蒙
- 資格認定
- イベント
などの事業には協会が向いています。
3.協会の事業モデル
いかにも協会らしい事業モデルとしては、以下3つが考えられます。
- 業界団体型の協会
- マニア型の協会
- 資格認定型の協会
3-1.業界団体型の協会
同じ業界に属する企業を会員とする協会。
昭和のころにできた協会の多くは、この業界団体型に属します。
このタイプの協会は会員(法人会員)から徴収する会費を主な収益源とします。
その会費を使って
- 業界のPR活動
- 法人会員の従業員にむけた研修
などを行います。
3-2.マニア型の協会
「鉄道マニア」「アニメファン」など、○○マニア、○○ファンを会員とする協会。
このタイプの協会は、イベントを主な収益源とします。
3-3.資格認定型の協会
民間資格を提供する協会。
たとえば
- ○○アドバイザー資格
- ○○ソムリエ資格
- ○○インストラクター資格
などの「資格」を提供します。
平成以降、このタイプの協会が増えました。
「起業」に向いているというのが、理由の1つです。
このタイプの協会は、資格を取得するための講座や検定試験を運営し、その受講料や受験料を主な収益源とします。
4.まとめ
協会は名乗るだけで作ることができます。
協会はには「非営利」のイメージがありますが、実際には営利活動ができます。
以上2つの理由により、起業する人が「会社」ではなく「協会」を選ぶケースが増えています。
協会のおもな事業モデルには
- 業界団体型
- マニア型
- 資格認定型
の3つがあります。
「起業」に特に向いているのは3つめの「資格認定型」の協会です。