ハレルヤ寓話

商標を使った「ビジネスモデルの失敗事例」を紹介します。

 

 ▽

 

イスラム教では戒律により

「食べてよいもの」

「食べてはいけないもの」

が細かく定められています。

なかでも豚肉と酒が特に厳しく禁じられているのは、よく知られていますね。

 

そんなイスラム教ですが、戒律を破っていない食べもの=食べてもよいもののことを

「ハラルフード」

と言います。

イスラム教徒の来日観光客が増えるにつれ、日本でも

「ハラルフードを提供するイスラムに優しい飲食店」

が増えてきています。

 

さて、

ハラルフードは要するに「イスラム食」ですけれども、イスラム教だけでなく、それぞれの宗教にはそれぞれ独自の「食のルール」が存在しています。

仏教の場合、それは「精進料理」となるわけですし、ユダヤ教の場合は、タルムードに書かれている食のルールに則った食材や食事のことを「コーシャフード」と呼んでいます。

 

アメリカでの話ですが、コーシャフードはそれ自体が健康に良いという理由で、ユダヤ教でない人々の間で流行したことがあります。

「コーシャフードのメニューがあります」

というPRをする飲食店がニューヨークあたりにたくさん誕生しました。

 

この、コーシャフードが流行したときに、

「キリスト教にも独自の食のルールがある」

ということを唱えた人々がいて、新約聖書に定められたルールにのっとった食事を「ハレルヤフード」と名づけ、さかんに宣伝しましたが、こちらのほうは、どうやらあまり定着しなかったようです。

 

そのほか、アメリカには

「産業革命以前の生活様式をかたくなに守り続ける」

という主義の人々がいて、「アーミッシュ」と呼ばれています。

電気・電話・自動車といったいわゆる文明生活を避けている人々です。

このアーミッシュの人々が食べているものを「アーミッシュフード」と呼びます。

文明生活を避けるのがアーミッシュなので、食事も、自給自足です。

化学肥料も農薬も使いませんから、必然的にオーガニックです。

ですので、「アーミッシュフード」は、たいへん健康によいはずだと、アーミッシュ以外の人々にも信じられています。

 

 ▽

 

さて、前述の「ハレルヤフード」、つまり

  • キリスト教の定めを守った食べもの
  • 新約聖書に従って食べる食事方法

ですが、これがあまり広がらなかったのには理由があります。

 

当時のアメリカでは、

「ハラルフード」(イスラム教)

「コーシャフード」(ユダヤ教)

が流行していたわけですけれども、目ざとい人たちは

「ハレルヤフードも流行するに違いない」

と考え、これをビジネスにしようと企んでいました。

そう考えた人は大勢いたようです。

 

そのなかの1人が、「ハレルヤフード」で商標を取りました。

そして商標を取った勢いで、ライバルたち、すなわちハレルヤフードを標榜していた他の人々をどんどん攻撃したのです。

「商標はウチが取ったのだから、あんた方は使っちゃいけないよ。使いたかったら商標使用料を払いなさいね」

というわけです。

 

攻撃されたのは

  • ハレルヤフード商品を開発しようとしていた食品会社
  • ハレルヤフードのメニューを揃えようとしていた飲食店
  • ハレルヤフードのレシピ本を書こうとしていた料理研究家

などです。

 

攻撃はみごとに功を奏し、ハレルヤフードをビジネスにしようと考える人たちが、全員、しらけてしまい、去っていきました。

  • 食品会社は商品開発をやめてしまいました。
  • 飲食店はメニュー開発をやめてしまいました。
  • 料理研究家はレシピ本の執筆をやめてしまいました。

ハレルヤフードという言葉を誰も使わなくなりました。

商標を取った人はこれで「しめしめ」と思ったことでしょう。

 

ところが、喜んだのも束の間、その先のことまでは考えていなかったようで、攻撃が大成功した結果どうなったかというと、

ハレルヤフードという言葉を誰も使わなくなったため、ハレルヤフードは流行にならす、急速に廃れた

のでした。

 

商標を取った本人だけは「ハレルヤフード」をさかんに宣伝したようですけど、孤軍奮闘が報われることはなく、

「ハレルヤフード」が日の目を見ることはとうとうありませんでした。

したがってビジネスはスタートできませんでした。

商標を取ったこと自体は戦略的に「あり」だとしても、まだ流行にならない段階で独り占めしようとしたことが、流行の火に水をかける失敗のもとだったわけです。

 

「商標を取ったのは自分だ」と騒ぎたくなるのを我慢してみんなが使うのを広い心で容認していたら、流行になっていたかもしれません。

そのときに初めて「商標を持っている」という事実を上手に利用すれば、流行の中心的存在になれたことでしょう。

 

 ▽

 

このエピソードは、イソップ物語の金のタマゴを生むガチョウの話に少し似ていますね。

実際のところ

「商標を取ったのは自分だ」

と騒いでしまったためにビジネスモデルじたいが不発に終わったケースは少なくありません。

筆者も目撃したことがあります。

今後の教訓としましょう。



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