ケンブリッジ・アナリティカという企業がありました。
何をしていた企業かというと「選挙のコンサルタント」です。
顧客である候補者のためにキャンペーンを組んだり広告を流したりしていました。
「選挙のコンサルタント」はアメリカだけの職業ではなく日本にもたくさんいます。
とくに珍しいビジネスというわけでもありません。
ただ、ケンブリッジ・アナリティカの場合、仕事のスケールが大きく、EU離脱をするかどうかのイギリスの国民投票に関わっていましたし、2016年のトランプ大統領の当選にも一役買ったとされています。
あとになってこの会社がフェイスブックから大量の個人情報を不正取得していたという疑惑がもちあがり、顧客が離れてしまったため
破産しました。
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ここだけを見れば、フェイスブックは「情報を盗まれた被害者」ということになりますが、本当の被害者は個人情報を使われてしまった
多くの利用者です。
ただし、ここでいう「個人情報」とは、名前や住所、クレジットカード番号といった「本当に重いもの」ではありません。
フェイスブックの中で
- どんな広告を見たか
- どんな記事を読んだか
といった「行動履歴」のことを指しています。
ある意味「軽い情報」なのですが、ケンブリッジ・アナリティカ疑惑事件をきっかけに
「フェイスブックなどに記録されている行動履歴データは誰のものなのか」
という議論が持ち上がりました。
というのは、フェイスブックは利用者の行動履歴をマーケティングに利用していますし、グーグルは利用者の「検索行動」をマーケティングに利用しています。
人々(我々は)今まで、このことを無自覚に受け入れていました。
ですが今度のことで巨大IT企業が人々の行動履歴データを蓄積することへの違和感が生まれています。
「フェイスブックやグーグルが我々の行動履歴を貯めこむのはけしからん。行動履歴がほしかったら利用者に金を払え」
という議論さえ持ち上がったのです。
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まあ、あえてフェイスブックやグーグルの立場になってみたら、これは不条理な議論かもしれません。
フェイスブックは莫大な費用を投下してSNSのプラットフォームを構築していますが、人々がそのプラットフォームを利用するにあたって料金を取っていません。
その代わりに行動履歴のデータをもらっています。
グーグルだって莫大な資金を投下して検索エンジンを作りましたが、人々がその検索エンジンを利用するにあたって料金を取っていません。
その代わりに検索履歴のデータをもらっています。
ようするにフェイスブックやグーグルとしては「ギブ&テイク」をしているつもりだったわけですから、
「行動履歴がほしかったら利用者に金を払え」
というのは多少は不条理な話ではあります。
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しかし一方で、
「フェイスブックもグーグルも大きくなりすぎた。ギブ&テイクなどと言いながら両企業ともそこから巨利を得ている。もはや民間企業として扱うことをやめ、公共の器だと見なして一定の制限をかけるべきだ」
という意見にも支持が集まっています。
つまり
「行動履歴はタダではない」
という考え方が広まってきているのです。
さて、そうした背景のなか、「行動履歴に金を払うビジネスモデル」が登場しています。
「あなたのレシートを買います」
というものです。
コンビニや量販店などで買物をしたときにレシートをもらいますね。
あれを捨てずにスマホで写真をとり、それをアプリで送ると、報酬が振り込まれてきます。
レシートは「買物の行動履歴」といえるので、「行動履歴に金を払うビジネスモデル」ということになります。
企業側は買物履歴を買い入れ、そのデータを集めてマーケティングに利用するというわけです。
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