ビジネスモデル先進国

かつて、この国の人々のあいだに

 欧米>日本>アジア

といった感覚があった頃、「タイムマシン戦略」なる言葉がよく使われていました。

これは

  1. 欧米で起きることはいずれ日本でも起きる
  2. だから欧米で定着したビジネスはいずれ日本でも定着する
  3. なので欧米で成功したビジネスモデルをいち早く日本に導入するとうまくいきやすい

という考え方につけられた名前です。

 

タイムマシン戦略の代表的な例として

  • マクドナルドやバーガーキング
  • ケンタッキーフライドチキン
  • スターバックスやタリーズコーヒー

などが挙げられます。

 

また、同様に「日本で起きることはいずれアジアでも起きる」というセオリーのもと、多くの日本のビジネスがアジア各国に導入されていきました。

 

一方、

  • 日本は世界でもっとも早く高齢化が進んでいる
  • シニアビジネスも世界一進んでいる(はず)

というところから、

「シニアビジネスは日本に学べ」

というビジネスマンが世界中にいることも確か。

 

 ▽

 

さて、IT関連の新規事業の分野(スタートアップ分野)では、

 シリコンバレー>それ以外のアメリカ>世界各国

という「順番感覚」が最近まであったように思われます。

シリコンバレーに本拠を置いている企業を挙げてみると、たとえば

  • アドビシステムズ
  • アップル
  • eBay
  • Google
  • インテル
  • オラクル
  • Yahoo!
  • ヒューレット・パッカード 
  • Facebook
  • シマンテック

などなど、そうそうたるメンバーです。

 

したがって「タイムマシン戦略」を応用するとすれば、

「シリコンバレーで成功したビジネスモデルをいち早く日本に導入するとうまくいきやすい」

ということになるわけです。

 

 ▽

 

ところが最近、シリコンバレーに追いつきそうなほど「ビジネスモデル先進国」になりつつある国があります。

中国です。

GDP世界2位という現在の中国の経済力を考えると「それはそうだろう」と思えなくもないですが、ただ、中国が「ビジネスモデル先進国」になりつつあるのには2つの「皮肉な理由」があります。

 

<皮肉な理由 その1>

中国は(北朝鮮ほど息苦しくはないと思いますが)政治的言論の自由がないとされる国です。

そうすると人々は新聞や雑誌などの紙媒体やテレビ・ラジオなどで自由な政治的発言ができないため、インターネットの中で言論の自由を得ようとしています。

むろん中国政府もインターネットの中での規制を強めようとしているようですが、政府当局に負けないようにあの手この手を繰り出す平均的な中国人のITに対する習熟度は日本人を超えています。

つまり「インターネット慣れ」しているので、発想も豊かになり、新しいビジネスモデルを発案しやすくなっています。

 

<皮肉な理由 その2>

中国人は自国の貨幣をあまり信頼していません。

日本人が現金好きなのとは正反対で、中国人は現金が嫌い。

そのため、暗号通貨(仮想通貨)があっという間に普及しています。

また、歴史的に「行儀の悪いビジネスマン」「ずるいビジネスマン」が比較的多い国のため、血縁関係以外は信用しない国民性です。

そのため「見知らぬ相手をどこまで信用するか」を見抜く能力が非常に高く、ITの技術を使って「個人の信用をスコア化するビジネス」が急速に発達しました。

「道徳的な人ほど得をするシステム」が出来つつあります。

つまり、新しいビジネスモデルを生み出しやすい土壌が日本より速く(圧倒的に速く)生まれつつあります。

 

 ▽

 

中国の

  • 政府の言論統制が厳しい
  • 現金への信頼が低い
  • ビジネスパートナーをなかなか信用できない

こういう部分だけに注目すると、「日本に生まれて良かったなあ」と思いがちですが、そんなマイナス要因があるおかげでかえって中国が「ビジネスしやすい国」「ビジネスモデル先進国」になりつつあるとすると、じつに皮肉な結果であり、日本人としては

複雑な気持ちになりますね。


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